月と農業と琉球人の話

こんにちは、のはやさいです。

また有るようで無いような立ち話。

前回紹介した、琉球王国時代の古い農書【西村外間筑登之親雲上農書】に関することです。

少し気になっていた一文


一、冬瓜種子、正月初牛の日又寅の日、満潮之時分蒔入候。
尤から潮の時分蒔入候はゝ、実付候てより実落候也。

西村外間筑登之親雲上農書

冬瓜の種は正月の初めての丑の日か寅の日、満潮の時まくべし
しかし干潮の時種を蒔くと、実が落ちてしまう

一、黄大根種子、六月一五日の前後に蒔入候事。

西村外間筑登之親雲上農書

人参の種子は六月十五日の前後に播種する。


というような文が有りました。どうかわからないが、先人が気づいている。「潮の干満」「月齢」つまり「潮の干満や月が与える野菜への影響」について、少し調べてみたので書いていきたいと思います。

植物に与える月の影響

とのことで、色々と書籍を巡ってみると、やはり植物の成長は月の動きに大きく影響を受けていることがわかりました。

月と潮位

まず、月と言えばよく知られているのは、海の干満。毎日、月齢や月の動きの変化によって引いたり満ちたりと、くり返されていることはよく知られています。

月と海の干満について説明をしますと

海面の水位は、半日を周期(1日2周期)にゆっくりと上下に変化します。この現象を「潮汐(ちょうせき)」といいます。この潮汐が起こる原因としては、月が地球に及ぼす引力と、地球の遠心力によって生じる力「起潮力」が原因だと言われています。

この起潮力によって地球が引き伸ばされたようになり、潮位が高いところが満潮、低いところが干潮となります。

月の引力が与える樹液への影響

この月の引力は、海だけではなく、地上の液体にも影響があり植物内の樹液の流れにも大きく影響を与えていることが分かっています。

例えば、いくつかの植物の開花が潮の干満と密接に関わっているほかに、甘い樹液を取る樹木も干潮時には全く出なくなるそうです。

ある書籍には

月の影響、もっと具体的に言えば研究者達も確認している潮の干満によって、一定の植物は顕著にその成長に差が現れる。つまり、満潮時は植物の生長が早く、干潮時にはその成長が緩やかになる。この原因としては、月の引力が考えられ、植物の樹液の流れに圧力がかかる時とかからない時で、その影響の仕方に変化が生じる。

月との農業 中南米農民の有機農法と暮らしの技術 ハイロ・レストレポ・リベラ著
【人物】ハイロ・レストレポ・リベラ

コロンビアの環境学、自然科学、農学を専攻する研究者。
中南米各地の農家、現地指導員の人気が高く。
中南米を中心に大学や研究機関を中心に教鞭を取ったこともある。
FAO(国際食料農業機関)とも関わりのある人物

としるされており、当時の琉球王国の農業人も満潮時、植物の生長が早く活発になる時に播種を行うべし月の引力と野菜の生長にかんして何かしらの知識があったのかもしれません

実が落ちる原理と根拠は有りませんでした。。。orz

月齢が与える植物への影響

そしてもう一つ「人参の種子は六月十五日の前後に播種する。」という文。当時は旧暦での暦を読んでいたと思うので15日というのは満月にあたります。

ちなみに、太陽と月と地球が列び起潮力が最もつよい「大潮」です。

とのことで、今度は月齢と植物について書籍を巡ってみると…色々な記載がありました。

月が植物に与える影響として新月から満月に向かう時期はどの植物も光合成が盛んになり、特に新月からの三日間にそのピークがくる。この時期は、とりもなおさず地球を照らす月光が最高値になる…

月との農業 中南米農民の有機農法と暮らしの技術 ハイロ・レストレポ・リベラ著
  • 新月   : 樹液の流れは下降し根部に集中する。
  • 上弦の月 : 樹液は上昇しはじめ、幹部に集中する。
  • 満月   : 樹液は葉や花・果実の部分に集中する。
  • 下弦の月 : 樹液は下降しはじめ、幹部に集中する。
月との農業 中南米農民の有機農法と暮らしの技術 ハイロ・レストレポ・リベラ著

また、十八夜(満月後3日から新月にかけて、水分(樹液)が下部へ拡散時)には地下に育つ野菜、ニンジン、ダイコン、ジャガイモ…(略)などを播種するとよい

月との農業 中南米農民の有機農法と暮らしの技術 ハイロ・レストレポ・リベラ著

月齢が植物の樹液の流れに与える影響に関する内容とそれに伴う播種時期の記載ですが、「人参の種子は六月十五日の前後に播種する。」(満月から新月にかけての期間)という記載の時期とも一致します。当時の琉球王国の農業人もこのように月がもたらす植物への影響を考えていたのかもしれません。

現代の指導される農法では、あまり月齢までの指示はありませんが、もう少し調べてみるのも有りなのかもしれません。

先人たちは自然を見ていろんな事に気づいていることが現代の人より多くあったのだろうと思います。

リスペクト!

それじゃ、今日はこのへんで

‐のはやさい‐

参考文献

【WEB】気象庁 「潮汐の仕組み」
月との農業 中南米農民の有機農法と暮らしの技術 ハイロ・レストレポ・リベラ著 農文協
日本農書全集 第34巻 ‐社団法人農山漁村文化協会刊‐