こんにちは
のはやさいです。
またまた、琉球時代の農書の紹介をしていきたいと思います。
前回は、
「安里村高良筑登之親雲上 田方并芋野菜類養生方大概之心得」
を紹介しました。
今回は、より詳しく野菜の栽培方法が書かれていたこの農書の紹介をしていきたいと思います。
西村外間筑登之親雲上農書
この琉球時代の農書は、西村(現,那覇市西)の外間筑登之親雲上(ほかまちくどうんぺーちん)がまとめた農書です。
時代は、道光十八年(和暦,天保九年 )に作成されており、野菜の育てかたから、畑の収支の見積もり方法、使用人の給与・雑費
など農業の経営についても書かれている農書になります。
本書籍の目次には、
- ナスやごぼう、冬瓜・人参・わけぎなどの栽培方法
- 前回紹介した安里村高良筑登之親雲上が著した農書の抜粋
- 豆・麦・キビ・綿タバコの栽培方法
- 堆肥の施し方
- 作物の収支の見積もり、使用人の給与
- 竹木類の仕立て方
などが記されております
今回も、野菜の栽培方法について、現代でも主に栽培されています、「冬瓜」・「人参」について抜粋し紹介できたらと思います。
冬瓜の作り方
一、冬瓜種子、正月初牛の日又寅の日、満潮之時分蒔入候。
尤から潮の時分蒔入候はゝ、実付候てより実落候也。
冬瓜は正月の初午の日か寅の日の満潮の時に播く。
干潮の時に播くと実がついても落ちてしまう。
一、二月に堀取芋畑にも、四方六尺間芋三十根つゝ堀取、穴掘候てかぢ壅、床下壅の間入、種子十粒程度土薄く覆い、鼠のかゝらさる為め京壅かけ置候。葉厚く青色等強、ふつみ候は抜捨、葉薄茶色の等三本つゝ一穴越二本つゝ立、畑敷所々へ木の枝差立、かつら本木所々押候也。
但根より三尺間置三穴掘、京壅入土にて覆候方も有之候。
二月に収穫するさつまいも畑では、六尺四方から3株くらいずつ掘り取り、そこに穴を掘って堆肥や床下肥を入れ、冬瓜の種子を10粒くらいずつ播いて薄く土をかけ、さらに、ねずみよけのために下肥をかけておく。
葉が厚く青く茂りすぎているものは抜き捨て、葉が薄茶色のものを仕立てる。
仕立てる本数は一穴おきに二本と三本の交互にする。
畑の所々に木の枝を立てて、これにつるの根本を寄せかけておく。
根本から三尺程離して三つほど穴を掘り、そこに下肥を入れて土を掛けて置く方法もある。
一、冬瓜かつら五尺程萌候時分頃、五度一穴に京壅四ねーぶつゝかけ、左候て実付候はゝ、京壅一荷にて四穴にかけ付、十五日、廿日目の間に右同断かけ付候。尤壅かけ候て両日内に雨降候はゝ瓜落候間、天気能々見合候義肝要に候。
且又早勝の時は五六日越、一穴に水一荷つゝかけ候也。
冬瓜のつるが五尺ほど伸びるまでに、下肥を一穴当たり四ひしゃくづずつ五回施す。
実がついたら、下肥を四穴に一荷の割合で施す。
それから十五日から二十日目にもう一度かける。
肥料を施してから二日以内に雨が降ると冬瓜の実がヘタから落ちるから、天気の様子をよく見ることが大切である。
日照りのときは、五、六日おきに一穴当たり一荷の水をかけるとよい。
一、冬瓜実付候はゝ、壅不相用方も有之、壅かけ候はゝ実落候由也
冬瓜の実がついたら、肥料はかけないほうがよい。肥料をかけると実が落ちてしまう。
人参の作り方
一、黄大根種子、六月一五日の前後に蒔入候事。
但畑敷晒し候てかぢ壅敷、打込拵、平地に踏ひしき置、潤候はゝ蒔入、かやにて薄く覆置候也。
人参の種子は六月十五日の前後に播種する。
畑を耕してよくさらし、堆肥を施し、また耕してから平らに踏み付けておく。
雨が降ったら播きつけ、茅で薄く覆いをしておく。
一、六月蒔の等は早く心あかり、七八月蒔はやはらかにして永く最通候由申す方も有之候也。
雨水の節に心あり候事。
六月に播いたものは、とう立ちが早く、七、八月に播いたものは根部が柔らかで長く食べられると言う者もいるそうだ。
之は雨水の頃にとう立ちする。
以上、冬瓜と人参の栽培方法の抜粋でした。
まとめ
この書物から琉球王国時代、
冬瓜・人参はさかんに栽培されていることがわかります。
肥料の与え方から水の掛け方、
仕立て方、など事細かく書かれているのは
現在の農業書と似たようなものを感じます。
また、現代の栽培要領で推進されている
冬瓜の普通栽培の時期(二月後半)と、
この農書に書かれている
「正月初牛の日又寅の日」が
(琉球王国時代は旧暦で動いているから現在の二月後半頃)
合うのがまたすごいなと感じるところです。
人参に関しても現代の推進されている
夏播きの時期始めと重なるところも、
当時の人たちがピンポイントで
野菜の栽培時期を割り出していたことも驚きです。
しかし特に驚いたことは、
潮の干満までを考えて植物の播種をしているところです。
次回、潮の干満と農耕についての
関係を調べて行けたらと思います。
琉球王国時代の農書について触れることができて
よかったです
それでは今日はこのへんで
‐のはやさい‐
参考文献
日本農書全集 第34巻 ‐社団法人農山漁村文化協会刊‐